【損益管理】月次決算締めの遅延がビジネスに与える影響とは?中小企業が直面するリスク②

損益管理に関すること

本日は【損益管理】月次決算締めの遅延がビジネスに与える影響とは?中小企業が直面するリスク①の続き。

前回のまとめ

  • 毎月15日までに単体月次決算できない会社はヤバイ
    • 問題① 意思決定を間違える、もしくは遅くなる
    • 問題② 会社全体が「締まりがない」状態になる
    • 問題③ キャッシュフロー、監査、ブランドなどにも影響がでる

前回は月次決算が遅れるリスクを説明した。今回は決算早期化における具体的手法を説明する。

月次決算の早期化で、一般的に言われていること

「月次決算の早期化」とググると、大抵こういう流れで説明が成されている。

  • 業務ごとの工数の把握・見直し
  • 書類提出の締切日を早めに設定する
  • 決算資料作成の効率化を図る
  • ERPを導入する

でもひとことで言って、あまりピンと来ない。こういうテンプレ系の指示は本当に多くて、大企業の管理部長も、業務改善コンサルも似たようなことを言っていた。こういう説明は「目標」であって、理想だけを言われても全然参考にならない。

今回私がお伝えするのは目標ではなく、決算早期化のための「プロセス」である。(※目標が間違ってるわけではないので念のため)

月次決算の早期化の具体的なプロセス

ここでは私が「実際に」月次決算締めを何度も効率化した経験から、決算の時間を短縮する具体的なプロセスを提案する。

①月次決算締めの重要性を経営陣に理解してもらう

決算早期化を掲げるときに、意外とやってないのはこれ。決算早期化がうまくいかない場合、大抵ここをスキップしているのが理由である。

まずは経営陣全員に「月次決算の早期化は大事である」と説明し、理解してもらうことが第一ステップ。月次決算締めは経営課題であり、企業全体で協力すべき事項。バックオフィスの問題ではない。ここの合意がまず絶対に必要。

②現場の協力を得られるよう全社通達する

次は会社全体への共有。経理部門は決算早期化を宣言し、決算スケジュールを作り、全社(もしくは経営会議)にプレゼンを行う。以下、プレゼン内容の例。

決算早期化に向けたプレゼンの内容(to 全社 or 経営会議)

  • なぜ決算スケジュールを守る必要があるのか
  • 実際の決算スケジュールの全体像
  • 各部が守るべきスケジュール

繰り返すが、月次決算締めは経営課題であり、企業全体で協力すべき内容である。営業部長、開発部長など、直接関係ない部門にも理解してもらう必要があるし、バックオフィスは全社にきちんと説明をする義務がある

ここで実際に私が失敗した例を上げておく。

20XX年、全社での業務改善を行うことになった。経理部では決算早期化を掲げ、15営業日→10営業日への短縮を目指すことにした。しかし当時着任したばかりの経理部長が、全社に対して全く説明をしていなかったのだ(新任だったので、恐らく遠慮があったのだと思う)。その結果、経理部からの協力依頼に対して、営業部門は「なんで経費精算の締め日を変えるんだ!」と文句を言い、生産管理部門は「こんな短い日程じゃ在庫棚卸ができない!」と文句を言い、決算早期化は遅々として進まなかった。

いま考えると、やっぱり「月次決算締めの早期化は全社課題である」っていう認識を誰も持ってなかったのが敗因だったなと。

③月中にタスクを分散させる(業務の平準化)

今度は具体的な改善プロセスになる。「決算早期化」というと、いきなりムダ業務を省きにいく人が多いと思うが、これは失敗しやすい。業務改善には時間がかかるので、即効性がないのだ。

私のオススメは、まずは月中へのタスク分散を検討することだ。月次決算は1営業日~5営業日あたりに作業が集中するが、この作業をよく観察すると「なぜこれを決算中にやってるの?」というものが意外と多い。そしてタスク分散は作業手順を変えるだけなので即効性があるのがメリット。以下はタスク分散の一例。

月中に分散できそうなタスク一覧

  • 経費支払(決算中は支払い処理をしない)
  • 売上計上(期間契約だけでも月中にとっとと上げる)
  • 給与計算(仕訳は月末までに切れるはず)
  • 資産の除却・減損(決算前に終わるはず)
  • 前払費用の処理(決算前に終わるはず)

このやり方なら1ヶ月もあれば対応可能で、即効性が高い。実際に私がやった事例でも、1人あたり6~8時間程度は月中作業に持っていくことができ、0.5~1.0日程度の決算短縮はすぐに実施できた。作業の横移動だけでも十分効果があることは認識しておきたい。

④プロセス改善を実施する

③でタスク分散すると、経理部に少しだけ余力が生まれる。この時点でようやくプロセス改善に入る。ここは企業によって様々な手法が考えられるので、一例のみ挙げておく。

  • デジタル化と自動化の導入
    手作業によるエラーの削減、処理速度の向上、アクセスしやすいデータベースを構築する
  • リモートワークの最適化
    クラウドに移行し、リモートワーク効率化と生産性の向上を図る
  • 標準化とドキュメント化
    作業手順書やガイドラインを文書化、およびトレーニングを行う

なおこれらの改善は大技が多いので、余力を作ってから取り掛からないと失敗しやすい(期限の大幅超過を含む)。「やれ」といって出来るものではないので、手順を追って取り掛かりたいところ。なお①~③まで社内準備をして、整理整頓が出来ていれば、ここで外部コンサルへのアウトソーシングが検討できる。社内リソースが足りない場合、限定的に外部委託するのは有力だろう。

まとめ

今回は、月次決算の早期化の具体的なプロセスをまとめてみた。

①月次決算締めの重要性を会社内で共有する
②現場の協力を得られるよう全社通達する
③月中にタスクを分散させる(業務の平準化)
④プロセス改善を実施する

私が言いたいのは、決算早期化で大事なのは手順であるということ。経理部だけで進めようとするのはかなり難しいし、一般的な「決算早期化」の手法を見ていきなり④に入ってもまず成功しない。コツは①②で周囲の協力を取り付けることと、③で余力を作ること。また並行してなんでもかんでもやろうとすると失敗するので、そこは優先順位付けと戦略が必要になる。

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