【損益管理】月次決算締めの遅延がビジネスに与える影響とは?中小企業が直面するリスク①

損益管理に関すること

本日は月次決算締めに関する話で一本。

みなさんの会社では、月次決算を期限通り、きちんと締めているだろうか。大企業ではビシッとスケジュール管理されているだろうが、中小企業でまだまだルールが緩かったりする。ではいったい何日で月次決算を締める必要があるのか、が今日のテーマ。

決算締めの平均日数データは?

まずは決算締めはどれくらいで行われるかを確認しておこう。以下は日本取引所グループが公表している、決算発表平均所要日数のデータである。

出典:日本取引所グループ:2023年3月期決算発表状況の集計結果について

東証決算発表は40.3日。「決算開示の45日ルール」があるので、これに合わせた数値になっている。これはあくまで「発表」であり、かつ四半期・半期・年度決算なので、内部の月次決算締めはもっと早くないといけない。では何日で月次決算を締めるのが理想なのか。

毎月○○日までに単体月次決算できない会社はヤバイ

企業内部での月次決算締め日は法的な縛りがなく、在庫の有無、原価計算の有無、連結決算の有無などを踏まえて締め日を決めている。私もいろんな経理マンと会話をしてきたが、「うちは3日で締める」「うちは1ヶ月経っても締まってない」など、本当に企業によってバラバラだった。

では逆に「単体月次決算は何日までに締めるべきか」という観点で考えてみる。あくまでも私の実体験を踏まえて、理論的に考えた場合、毎月15日に単体月次決算できない会社はヤバイと考える。以下その理由。

【毎月15日に単体月次決算が出来ない会社はヤバイ理由】

  • 経営会議・取締役会は毎月20日~31日に行われることがほとんど
    • 月イチ会議で決算報告の議論をするため、この日程になる
  • 単体月次決算後、経営会議資料の作成に最低3日、休日含め5日必要
  • よって毎月15日に単体月次決算を締めないと、経営会議に確定値が出せない
毎月15日までに締めないと、経営会議に確定値が出せない可能性が出てくる

毎月15日というのは経営陣に月次決算の確定数値を出すデッドラインとなる。実際、15日以降に締め日を設定していた企業は、たいてい1ヶ月遅れで月次決算報告をしていた。その企業の経理担当者も「こんな古い情報見て、なにを判断するのか。。。」と言っていた。恐らく自分たちも「遅い」と分かっているのだろう。

月次決算数値が確定しないことによる問題点

月次決算が締まらなくても、速報値や概算値がわかってればいいのでは?という考える人は一定数いる。実際、私が知っている会社では、3か月後に「そろそろあの時(3ヶ月前)の決算見たいな」と言っている経営者もいた。しかし月次決算数値は概算でいい、という考え方はリスクが非常に高い。以下その理由。

①意思決定を間違える、もしくは遅くなる

月次決算数値が確定していなければ、正しくない数字で判断することになり、意思決定を間違えたり、判断が遅くなったりする。これは当然だろう。

サッカーで例えてみる。監督がピッチの状況を正しく把握できないと、選手交代のタイミングはどうなるか。「そろそろ疲れてそう」と思い込みで変えたり、「まだ大丈夫だろう」とタイミングが遅れたりする。そして意思決定を間違えれば、戦況にダイレクトに跳ね返るのが勝負の厳しさ。せっかく有利だった戦況は一変し、優勝候補だったのにベスト8で敗退する、といったことが起こる(最近の日本代表もこんな感じ。。。)。

具体的な例も一つ。ある半導体メーカーでは慢性的に月次決算数値の確定が遅れていたが、景気高揚によって受注が伸びた結果、生産ラインの調整が1ヶ月遅れ、在庫が一気に枯渇した。市場需要に対応できずに大きな機会損失を被っただけでなく、受注キャンセルやリピーターも失ってしまったのだ。在庫数量の確認や、営業と製造の連携がリアルタイムで行えていれば、対応は十分に出来たはずだ。

この意思決定を間違えるリスク、特に注意したいのは成長期の企業である。成長期の企業は売上が伸びているので、速報値の売上を見れば安心するし、それ以外の項目は遅れてもいいや、というマインドになりがち。しかし企業の問題は売上以外で噴出することも多い。資金の枯渇、債権回収の遅れ、在庫量の増減や、他にも採用人員数、生産性の下落など。これら1つでも気づくのが遅れれば、一気に挽回が難しくなる戦況に持っていかれるのは理解できるだろう。

このように、ビジネスでは戦況はあっという間に変わる。そして私の経験上、企業の成長が止まる原因は他社ではなく、実は自滅がほとんど。自滅しないようにするために、決算は確定値で論理的に意思決定すべき。速報値で判断するのは、野生のカンで経営するのとそう変わらない。

②会社全体が「締まりがない」状態になる

月次決算数値が速報値であっても、精度が高ければ影響はない、と考える人もいるだろう。ただこの精度の高さは恐らく維持できない。なぜなら、月次決算を締めている人間(経理部)が「概算値でいい」と思えば、期限内に締める努力をしなくなるからだ。

経理部は月次決算に業務が集中するため、決算時は毎日夜遅くまで作業している。これが「締めなくていい」となればどんなに嬉しいことか。5日で締まるはずだった月次決算は、6日、7日と伸びていき、他の作業を優先しはじめ、いつの間にか15日でも締まらなくなる。期限がなければ後回しにするのは当然だろう。

このように、速報値を使うことで「締まらなくてもいいや」というマインドになることが問題で、文字通り「締まりがない」状態になり統制が効かなくなる、こっちの影響が怖い。気づいたときには期限を大幅に超過して、さらに「まだ出来てません」「人員が足りません」という状況が出来上がっていることだろう。

その他の問題点

上では2つほど問題点を上げたが、以下の問題も当然ある。教科書通りの話なので詳細は割愛するが、過剰書きで列挙しておく。

  • キャッシュフローが管理できず、資金調達や投資に影響が出る
  • 監査プロセスが圧迫され、質の高い監査が受けられない
  • 万が一開示が遅延すれば、大きくブランドを毀損する

まとめ

  • 毎月15日までに単体月次決算できない会社はヤバイ
    • 問題① 意思決定を間違える、もしくは遅くなる
    • 問題② 会社全体が「締まりがない」状態になる
    • 問題③ キャッシュフロー、監査、ブランドなどにも影響がでる

今回、月次決算が遅れるリスクを理解したところで、今度は決算をどうやって早期化するか、その具体的手法を説明する。【損益管理】月次決算締めの遅延がビジネスに与える影響とは?中小企業が直面するリスク① に続く。

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