ダイナーマスクです。このブログでは「バックオフィス戦略構築って大事だよ」という内容をわかりやすく書いてます。今日は営業が取ってくる受注を承認したり、契約管理をしたりといったミッションを持つ「営業サポート」の効率性に関して一本。
エピソード:私が営業サポート責任者だったころの話
営業の人「すみません、ご相談があって、契約をちょっと変えたいんですが」
ダイナー「はい、どうしました」
営業の人「顧客が、ここの契約を見直さないと取引しない、って言ってるんですよ」
ダイナー「どんな理由で見直してほしいって言ってるの?」
営業の人「そこは聞いてないです」
ダイナー「契約書見直したり、手続き変えたり、決裁取ったり、みんな大変になるんだけど」
営業の人「顧客がそう言ってるんで、お願いしますよ」
ダイナー「 」
顧客の声と営業サポート効率性の関係
「営業サポートの効率性を上げる方法」と聞くと、一般的にはこんな回答が想定される。
- マニュアルを整備する
- 業務フローを見直す
- AI、RPA(ロボット)、クラウドサービスなど、効率化できるシステムを入れる
確かにこれらは効率性を上げるには有効なのだが、事はそう単純ではない。効率性が下がる要因を潰せてないので、高い効率性が継続しないのだ。では効率性が下がる要因はなにか。一言でいうと、
顧客からの声に、過剰に対応しすぎること
これである。顧客満足は事業成功の重要な鍵ではあるのだが、一方で顧客要望に対応しすぎると営業サポート側の効率性が犠牲になる。今回は効率性が下がるメカニズムと、バランスを取るための戦略を綴ってみる。
顧客の声で効率性が下がる理由 ①リソースの分散
「この顧客に対して、今回だけこういう対応はできないでしょうか」と言う営業からの問い合わせは多い。しかし当然ながら社内のリソースは有限。顧客の多様な要求に応えていると、本来業務を止めざるを得ない。限られたリソースを有効に使えていないため、効率性は下がると言える。
顧客の声で効率性が下がる理由 ②プロセスの複雑化
「この顧客はお得意様なので、特別対応しよう」この発言は営業サポート側から聞こえてくる。しかしこれを認めてしまうと、お得意様の分だけプロセスは増える。また通常マニュアルと異なる作業になるため、エラーの発生率も上がってしまう。プロセスが複雑化することで、効率性は下がると言える。
顧客の声で効率性が下がる理由 ③プロセス変更への対応
「この顧客には、このマニュアルを使ってください」この発言は②に絡んで発生する。顧客要望に応じて業務プロセスを変更すると、営業担当者の混乱を招き、営業サポートはマニュアル作成やトレーニングコストが増加する。プロセス変更に対応することで、効率性は下がると言える。
問題は「顧客のため」になるバランスの取り方にある
経営者はよく「顧客のため」という言葉を標榜するが、この概念自体は正しい。ビジネスとは「顧客の困りごとを解決するもの」だからだ。しかし顧客に特別対応すればするほど、営業サポート側の効率性は下がる。では顧客のためにもなり、かつ効率性が下がらない最適なバランスはどこにあるのか。
自社と顧客のWin×Winが最大化するポイントこそ、「顧客のため」になる最適なバランスである。
いくら「顧客のため」と言っても、自社がLoseになる要望を受けていると継続取引が難しくなる。営業も薄々「負担がかかりそうだな」と感じているからこそ、「顧客がそう言ったから」という発言をして、営業サポートを説得にかかるのだ。そこにはコスト意識がないというよりも、コストがわからない、というのが正確なところだろう。
対して営業サポート側は「なぜ顧客はこの要望をしてきたのか(本当に必要なのか)」「要望に応えるコストはどれくらいか」「コストが低い代替案はないのか」。ここまで考えて判断すべきだし、コストを考えることが顧客のためになることを認識すべきである。要望を全部受けてたらコストが上がり、売価も上がり、顧客のLoseに繋がる。これでは「顧客のため」にならないからだ。
バックオフィス戦略から見た改善策
バックオフィス戦略から見た「顧客の声と営業サポート効率性の関係」について、具体的な戦略を3つ提示しておくとこんな感じ。
- 営業担当者は、顧客が要望してきた背景を必ず確認する
- 営業サポートは、コストの側面から顧客要望を受けるかどうか判断する
- 経営者は、営業サポートにコスト判断ができる人材を配置する
1は会社ルールの徹底で対応できるし、2はトレーニングで十分対応可能。3は「営業サポート」という字面にとらわれず、コスト判断ができる人間を配置する。これだけやれば、少なくとも営業サポートの効率性は悪化しないし、これと併せて効率性向上の施策を進めれば、効果は倍増するはずだ。
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