ダイナーマスクです。このブログでは「バックオフィス戦略構築って大事だよ」という内容をわかりやすく書いてます。今日は「コスト削減施策はなぜうまくいかないのか②」。①の続きになります。
ダイナーマスクが選ぶ「コスト削減がうまくいかない理由・トップ3」
まずは①の振り返り。企業内部で20年以上、コスト削減を見てきたダイナーマスクが独断で選ぶ「コスト削減がうまくいかない理由・トップ3」がこちら。
【ダイナーマスクが選ぶ、コスト削減がうまくいかない理由・トップ3】
第3位:削減の優先順位がつけられない
第2位:ケチることと削減することの違いがわからない
第1位:○○○○をしていない
今日はこの内容を掘り下げてみる。
第3位:削減の優先順位がつけられない
コスト削減がうまくいかない理由・第3位は削減の優先順位がつけられない。
企業では「全部門で5%づつコスト削減せよ」などの指示が飛ぶことがある。全社で痛みを分かち合うべきだ、という考えは理解できるが、これは下策。全社一斉施策には優先順位がないので、社員のリソースが効果の低い施策に分散されることを意味する。結果として全体の削減効果が薄れるのだ。
また「新規投資を止める」とか「採用を止める」といった、ドラスティックで短期視点に偏った施策も上策とはいえない。事業の中核をなす機能や、将来の成長投資を止めることは、中長期的に見ると効果が高いとは言えないからだ。
コスト削減の取り組みでは、短期的な節約よりも長期的な戦略的価値が重要になる。
優先順位をつけるための戦略とは
優先順位の付け方はシンプルだ。まずは事業コストが最も高いところから攻めるのがよい。100万円のコストを5%削るよりも、1,000万円のコストを1%削る方が通常は簡単だからだ。プラスチックストローやゴミ袋を削減するより、発泡スチロールやコンビニ弁当の容器を削減した方が効果は高いのと同じ理屈である(政府は行動変容でプラゴミを減らすとか言ってるが、あれは詭弁でしか無いと思う)。
そして各コストのROI(投資対効果)を見ることも重要になる。新規投資を止めたり、採用ストップによって短期的にPLは改善するが、実は中長期的な利益の先食いだった、なんてことはよくある。コスト削減はあくまでもムダなコスト、ROIの低いコストから削減するのが鉄則である。
ダイナーマスクが実際に体験した怖い話
「全社一斉でのコスト削減」「新規投資の停止」「採用ストップ」は、リーマンショック時に私も体験している。確かに短期PLは改善したが、その後ジリ貧となり打ち手がなくなった結果、2007年には成長期にあった会社が、2013年に衰退期となり事業売却になったのだ。判断ミスは命取り、である。
第2位:ケチることと削減することの違いがわからない
コスト削減がうまくいかない理由・第2位はケチることと削減することの違いがわからない。
世の中には「うちは無駄なものは買ってない、だからコスト削減はできている」と胸を張る経営者の方がいる。無駄なものを買わないのは確かに大事だが、実は効果があるものを買わず、単にケチってるだけ、というケースは非常に多い。
コスト削減とは、無駄を省き、効率性を高めて経費を減らす行動である。一方でケチることは、単に支出を控える行為であり、時に品質や効果を犠牲にする。この違いを理解しないと、重要な機能やサービスの質を低下させ、長期的な利益喪失(機会損失)やコスト増加につながる可能性がある。
ケチることと削減することの違いを分ける戦略とは
前述の通り、ケチるというのは単に支出を控える行為であり、支出による収益を考えていない。よって有効な戦略は、支出による収益を考えること、つまりROIをきちんと計算することとなる。判断を感情に任せず、ロジカルに判断することが大切。
ダイナーマスクが実際に体験した怖い話
私が所属していた企業で、とある顧客管理システムの使い勝手が悪く、改善によるコスト削減を図ったことがある。システム部門と共同でROIを計算したところ、約2億円の投資で、年間1億円以上の効果が10年以上続くこととが判明し、自信を持って提案したことがある。しかし結果は、2億円という支出を惜しんだ社長の一言で却下されたのだ。「固定資産化できるから、単年度でも1億円以上プラスですよ!」と説得したのだが、首を縦に振ってはくれなかった。
このシステム、いまだに使い勝手は改善されず、多額のライセンス使用料と人件費を投下しているらしい。ケチらなければどうなっていたのか、今でも気になっている。
第1位:○○○○をしていない
コスト削減がうまくいかない理由・第1位は効果測定をしていない。これは本当に多い。
例えば売上であれば、目標を定めて進捗管理することは、どこの企業も当たり前にやっている。しかしことコスト削減施策となると途端にダメダメになる。経営者が「5%削減しろ」という命令だけ出して、実際の目標値に落とし込んでいなかったり、結果値をきちんと算出していなかったりするのだ。
目標設定や効果測定のタスクがないとどうなるか。コスト削減施策はうやむやになり、1年後にPLを見て「全然利益が伸びてない!」となり、再びコスト削減の指令を出すが、再び施策はうやむやになる。これの繰り返しである。
効果測定を行わなければ、どの施策が、どれくらい効果が出たのかわからない。つまりコスト削減施策に成果があったのか誰もわからず、再現性がないのが問題なのである。何度コスト削減施策を指示しても一向に効果が出ないのは、これが原因である。
○○○○をするための戦略とは
効果測定をするためには、まずは売上と同じ管理手法を取るのがよい。事前に明確な基準を設定し、定期的に進捗を監視する。これを管理部門に指示して、報告義務を課すことが有効である。
例えば「○○を5%削減しろ」と指示したする。次は実際に5%削減できるのか、その具体的な削減施策までを立案する。そして最終的にどれだけ削減できたか、立てた目標とのギャップはなんなのか、次回への反省はなんなのかをまとめて報告する。ここまでやって初めて「コスト削減施策」と言えるのだ。
ダイナーマスクが実際に行った○○○○
私がバックオフィスを統括していた際、経営陣に理解してもらうために、目標設定、進捗報告、完了報告をすべて定量化して提出していた。その結果、4年間で品質は変わらず、コスト削減効果25%(金額で年間1億円の削減)という成果を上げることができた。
ここでは金額の多寡は重要ではない。まずは戦略を決めること、そして金額を提示できるようになることが重要である。
実際にコスト削減ができる企業になるには
ここまで書いてきたことで、コスト削減がうまくいかないメカニズムと、その対策は何となくでも理解できたかと思う。しかし実際にやるとなると話が変わってくる。コスト削減には戦略が必要なのだが、バックオフィスは戦略を作った経験が少ないからだ。
こういった「内容はわかるけど、できる人はいない」という場合、戦略策定ができる外部リソースを使う手がある。費用はかかるがスピードは早いので、「時間を買う」という発想でコスト投下すると、ROIが高く出ることがあり、検討に値する。DMSはコスト削減サポートが大の得意ですので、ぜひ一度ご相談ください!
コメント