【経理キャリア①】簿記資格だけで満足してないですか?経理キャリアの壁とは

会計に関すること

ブログタイトルが「バックオフィスの舞台裏」なのに、全然舞台裏を書いてないことに気づいた。そこで今回は経理パーソンの舞台裏について一本。

経理は専門的だし、資格があれば食いっぱぐれない、というイメージがあるが、実際のところはどうなのか。20年以上にわたって経理にタッチした私が分析してみた。

エピソード:私が経理マネージャーだったころの話

経理部員「ダイナーさん、売上計上基準がわからないって○○さんが言ってました」
ダイナー「え?あのひとベテランだし、そもそも簿記1級って言ってなかったっけ」
経理部員「業務プロセスがわからないと判断できないって」
ダイナー「新収益認識基準か。5ステップの通りに進めればいいんじゃないの」
経理部員「はい、でも5ステップが判断できないと」
ダイナー「現場に聞けばいいんじゃないの」
経理部員「現場の誰に聞けばいいかわからないから、ダイナーさんに聞いてくれって」
ダイナー「 」

ビジネスパーソンにとって、簿記は基礎スキルである

そもそも、ビジネスパーソンにとって簿記はどれくらい重要なのか。

簿記は会社の売上、利益、資産、費用といったお金の流れを表すものであり、ビジネスの共通言語と言える。よってすべてのビジネスパーソンにとって、簿記は必須レベルの知識なのは間違いない。ビジネスで「金勘定ができません」では、なんのために働いてるのかわからない。

でも私が見てる感じ、簿記資格を持ってても、中身を理解できてない人は結構多いと思う。結構ポジションが上の営業マンでも「売上」と「入金」の違いが分からないって人はかなり多いし、もっというと「売上がなんなのか」を正確に答えられない人も結構多い。それでも営業マンとしては超優秀だったりするので、簿記「資格」が必須というのは少し違うと思う。

ではビジネスパーソンとして簿記をどこまで知っておけばよいか。個人的には、せめて売上と費用と利益、もっといえば自部門PLの仕組みは最低限知っていた方がよいとは思う。それ以上は職種とかポジションによる、って感じかな。在庫管理者だったらFIFOと移動平均法くらいは知っておく、とか。

経理初心者は、簿記の知識(と資格)が必要

ビジネスパーソンは「知識として」簿記は必須、と書いたが、経理は「実務として」簿記が必須である。そのため経理初心者にとって簿記資格取得は必須レベルと考えてよい。実際に私も経理職の採用を150人以上やってきたが、経理初心者は簿記資格の有無を必ず見ていたし、経理にジョブチェンジする場合は簿記資格を取ってから転職に動いた方が絶対に良い。

なぜジョブチェンジの採用で簿記資格を見られるのか。一般的に簿記資格は「簿記を勉強したという証明」になるため、採用に失敗するリスクが少ないからだろう。いちおう理には叶っている。

ただ私の見方はちょっと違う。私が簿記資格を見る理由は、簿記をやってないと専門用語についていけなくてかわいそうだから。経理初心者が仕事で詰まるポイントは十中八九「言葉が理解できない」なのだ。海外留学するときに、現地語を勉強しない人はいないのと一緒。言葉がわからないことほどツライものはないし、そんなツラい状況はビジネスの先輩として勧めにくいな、とは思ってた。

逆に言えば、簿記3級でも簿記2級でも、言葉さえ理解できるのなら等級に差はないかな、とは思う(あくまで個人の感覚です)。

経理にとって、簿記は「覚えるもの」ではなくなった

めでたく簿記資格を取って、経理職に採用されたあとはどうなるか。まず、実務の9割以上はルーティンワークである。出金、入金、売上、税計算などは業務プロセスとして確立されており、簿記知識というよりも「毎回同じことを、再現性高く、間違えずにやる」ことが求められる。

では簿記の知識はどこで使うのかというと、残りの1割、イレギュラー対応である。しかしこのイレギュラー対応、近年は対処方法が変わってきていることにお気づきだろうか。

【経理のイレギュラー対応】
・昔の経理:「自分の簿記知識+分厚い会計本で調べる」
・今の経理:「ネットやAIで調べる」

いまの時代、ネットやAIで調べれば大抵のことはわかる。不明な点はすぐ調べて、すぐに自分の簿記知識に加える、というのが業務の流れになっている。つまり事業会社の経理にとって、簿記の知識は「覚えるもの」ではなく「調べるもの」になった。これは事実だと思う。

経理のキャリアは簿記スキルだけでは頭打ちになる

このように簿記知識が「調べるもの」になり、変化したものがある。それは経理パーソンに求められるスキルだ。もちろん簿記1級クラスの知識が頭に詰まっていて、すぐに取り出せる人材は心強い。しかしネットで調べればヒットするものが、そこまで価値が高いのか、といわれると疑問符はつく。

もっと言うと、いまは簿記1級を取ればスキルアップできる、キャリアアップできる、という時代ではない。簿記だけでは差別化しにくく、他のスキルが不足していればキャリアは早晩行き詰まるだろう。(ちなみに冒頭のエピソードにあった経理部員は、簿記1級だけどキャリアアップは行き詰まってるな、という人材だった)

では具体的に、身につけるべき簿記以外のスキルとはなんだろうか。【経理キャリア②】簿記資格と組み合わせるべきスキル3選:経理キャリアの扉を開く につづく。

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