今回は【採用】選ばれる企業、選ばれない企業:実はバックオフィスの採用は難しい① の続き。どうすればバックオフィス採用がうまくいくのか、差別化ができるのかを分析していく。
前回のまとめ
バックオフィス採用の現状はこんな感じ。
- オファー内容がどれも同じで、工夫を感じない
- 要求レベルが非常に高く、ハードルが高く感じる
- どの企業も必要な人材なため、実は採用難易度は非常に高い
この特徴を整理すると「競争が激しい市場で、他とあまり変わらない施策を取り、価格調整しか行えない」という、レッドオーシャンの特徴そのものである。そりゃ採用も難しいわけだ。
バックオフィス採用にはマーケティングの視点が必要
バックオフィス採用の課題が分かれば、次は対策になる。市場において自分たちを選んでもらえばよいのだから、これはマーケティング施策の転用が有効である。順を追って見ていく。(マーケ界隈の方には釈迦に説法だろうが、お付き合いください)
①コンセプトメイキング
コンセプトメイキングとは、企業やサービスの存在理由を1文で表現する「コンセプト」を定義し、そのコンセプトを実現するためのデザインやサービスの全体像を決定していくことである。
簡単にいうと、「商品やサービスのパッケージやイメージはなにかを定めること」であり、今回のバックオフィス採用に当てはめるならば、取りたい人材に対して見せる、自分たちが存在する意味とそのイメージとなる。
②コンテンツメイキング
コンテンツメイキングとは、コンセプトメイキングの課題解決を起点に「刺さる」コンテンツをつくることである。
簡単にいうと、「どんなパッケージやイメージなら勝てるか?」であり、今回のバックオフィス採用に当てはめるならば、取りたい人材のニーズを理解して、そこに「刺さる」情報や価値を提供する、となる。
①と②をバックオフィス採用に転用するとこんな感じ。
①バックオフィス採用のコンセプトメイキング
1. 自社の企業イメージ(パッケージ)を明確にする
2. 自社の従業員のイメージを明確にする
3. 自社のバックオフィスの特徴を明確にする
②バックオフィス採用のコンテンツメイキング
1. 候補者に刺さるような、自社にしかない特徴を明確にする
2. シンプルなスローガン、候補者を惹きつける文章やコピーを作る
3. 動画、インタビュー、ブログ等で生の声を出す
ここまで書いて「動画やインタビューなんかとっくに作ってる」という企業も多いだろう。確かに最近は採用動画やインタビューなどの発信は増えてきている。しかしちょっと待ってほしい。載せている動画は、判で押したように事業開発者、営業、エンジニア、キラキラ女子、働くママさんばかり。バックオフィスの情報を載せている企業は本当に少ないのだ。他の職種はきちんとやっているのに、なぜ採用難易度の高いバックオフィスを放っておくのか、この理由はラストに後述する。
私が実践したバックオフィス採用戦略
ここで、私が実際にどう考えて、どう動いたかを記しておく。全ての企業に使えるとも思わないが、なにか気づきがあると嬉しい。
①経理人材の採用時
まずコンセプトはこんな感じ。
①経理人材のコンセプトメイキング
1. 企業イメージは「公共性が高いホワイト企業」
2. 従業員イメージは「ロジカルでいい人が多い」
3. 経理のイメージは「自走力があれば、のびのびと自由にできる」
ここに刺さる人(ペルソナ)はこんなイメージ。
- 会計士・税理士業界でハードに働いていたが疲れた人
- ママさんで時間制限があるが、キャリアに穴を開けたくない人
「優秀な人材」とひとくくりにしていないことがお分かりだろう。優秀な人材のうち、自社とマッチするのはどんな人材か、まで落とし込む必要がある。その結果、作ったコンテンツがこちら。
②経理人材のコンテンツメイキング
1. 経理業界では最もシステム化が進んでおり、ルーティンワークが少ない
2. ロジカルで時間効率を重視しているので、ムダな残業、意味のない仕事が少ない
3. 給与はあまり高くできないが、残業も少ないので非常に働きやすい
結果、応募としては多くいただき、その中から税理士法人上がりの方を採用できた。その方に聞いたところ「ハードワークに疲れていたのと、キャッシュ周りの経験や債権回収の経験が少なかったので、そこを経験できそうなのがよかった」とのこと。
②戦略総務の採用時
まずコンセプトはこんな感じ。
①戦略総務のコンセプトメイキング
1. 企業イメージは「公共性が高いホワイト企業」
2. 従業員イメージは「ロジカルでいい人が多い」
3. 戦略総務のイメージは「お客様である従業員の満足度をひたすら上げる」
ここに刺さるペルソナはこんな感じ。
- 戦略総務として、コミュニケーション施策や新しい企画などを多くできる人
- 企画営業にいたが、数字を追うのに疲れた人
総務というと「なんでもできるお世話係」のイメージがあるが、このときは戦略を考えられる総務を採用したかった。そのため総務未経験でも可とし、企画力があるエネルギッシュな人材に狙いを絞った。コンセプトとコンテンツはこんな感じ。
②戦略総務のコンテンツメイキング
1. 戦略総務という、近未来に増えるであろうポジションの先駆けである
2. 企画を一緒に考えてくれる人材であれば、総務経験はなくてもいい
3. 給与はあまり高くできないが、営業よりも時間拘束は短く、他にはない経験を詰める
結果、こちらも応募は多くいただいて、狙い通りに企画営業だった女性を採用できた。その方に聞いたところ「戦略総務という名前が良かったのと、内容が面白そうだった」という理由で選んでいただけたとのこと。ちゃんとコンテンツが刺さってくれた、ということだ。
コンテンツメイキングができるバックオフィスを目指す
コンテンツメイキングが重要なのは理解いただけたかと思う。ただ「ルーティンワークが少ない」とか「ムダな残業や、意味のない仕事がない」とか、もともと強みがあるから採用できたんでしょ、と意見も出ると思う。実際その通りで、私はこのコンテンツを自社の強みとして、私が意識的に作ってきたからこそ、強みとしてプッシュできたのだ。つまり、
バックオフィスこそ、どんな組織を目指すかのビジョンと戦略が必要
これが大切なのだ。上の方で「採用難易度の高いバックオフィスを放っておく理由」と書いたが、単純にビジョンと戦略がなく、差別化ができていないから書くことがないだけ。そうではなく、どんなビジョンで何を目指すのか、真剣に考えて組織を作っていく。そうすれば自社のバックオフィスだってちゃんと魅力づけはできるはずだ。
まとめ
表題には「バックオフィスの採用は難しい」としたが、バックオフィスのビジョンを作り、強みを理解して、刺さるコンテンツを作り、ちゃんと差別化する。これができれば必ず良い人材は取れるはずだ。例えばこんな感じ。
- ○○業務をやってみたい方、サポートをもらいながら1から経験できるのでオススメ!
- △△のプロがいるので、生きた経験を学べます!
- 明るく素晴らしい上司がいるので、この人からサポートをもらえます!
少なくとも「ホワイトです」とか「アットホームな職場です」ではハローワークにある求人と変わらないし、問題解決はできないと認識すべき。そしてコンテンツを積極的に発信することも必要になる。他の部門と同様に、動画、インタビューを展開するのも効果的だろう。
ちなみに、私がバックオフィスのビジョンを作ってから定着するまで、1年以上はかかっている。時間はかかるかもしれないが、戦略とは時間がかかるもの。まだ他の企業もテンプレ通りのオファーメールを送ってきてる状況だけに、少しづつ動いていけば、近い将来、採用市場でも有利になるはずだ。
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