【営業サポート】本当にDXできてますか?アナログの罠を脱却し、デジタル変革で成果を上げる戦略②

営業サポートに関すること

今回は【営業サポート】本当にDXできてますか?アナログの罠を脱却し、デジタル変革で成果を上げる戦略① の続き。

前回はシステムがデジタルなのに業務はアナログのまま、という状況を私は「アナログの罠」と表現した。まずはアナログの罠が発生するメカニズムを、ノンフィクションを元に解明してみる。

アナログの罠が発生した事例

まずは実際に「アナログの罠」が発生した事例をご紹介。といっても実際に私が体験したノンフィクションであり黒歴史でもある。

①親会社と経営者がシステム導入を決定

時は20XX年。親会社の意向もあって、経営会議でERPシステムの導入を決定。システム概要はこんな感じだった。

  • 一大プロジェクトであり、全社の業務改善を一気に行う
  • 営業、購買、設計、製造、サービス、経理などを一元管理
  • リアルタイムで作業や在庫の動きが見えるようになる
  • 製品の原価構成が明確になり、分析も容易になる

我々としては「夢のようなシステムができるのか!」と少し期待した覚えがある。このときは誰かが作ってくれるものだと思っていた。俺がやらなきゃ誰かやる、の精神である。

②全社プロジェクト立ち上げ

いよいよPJT立ち上げ。構成はこんな感じだった。

【PJTのメンバー構成】

  • PJTオーナー :経営会議(管理する人)
  • PJTマネジャー:親会社の偉い人(システムに詳しい)
  • PJTリーダー :情報システム部門長(システムは詳しい)
  • PJTメンバー :現場のリーダー(実務に詳しい)

この構成メンバー、「管理」「システム」「実務」には詳しいのだが、問題がひとつ。このシステムをどう活用して、どう企業として勝っていくかという「戦略」を持っている人が誰もいなかったのだ。ま、始まってみれば何とかなるだろう、と思っていたのも事実。

③現場の使いやすいようにカスタマイズしまくる日々

PJT発足後、システムの要件定義に入る。このとき多くのPJTメンバーはどう考えていたか。

【PJTメンバーが考えていたこと】

  • 変わったことをして、業務を止めるわけにはいかない
  • 失敗して、権限がある人に怒られるのはいやだ
  • 今までのやり方に慣れているから、今のままがいい
  • やり方を変えると、関係部署に迷惑がかかる

実務は任されていても、権力はないのがPJTメンバー。自分のせいで問題が起きては困る、という発想から、心理的に「何も変えたくない」状況になる。当然、改善など進まない。

一方、経営者はというと「現場の使うシステムだから、現場のやりたいようにやらせよう」とも考える。現場を大切にしているようにも映るが、現場に権力はないので、やりたいようには出来ない。そもそも「企業としてやりたいこと」をきちんと理解していないので、やりたいことも何もないのだ。

現場が「何も変えたくない」という心理状態だとどうなるか。現状のアナログ業務ができるよう、最新システムをカスタマイズしていったのだ。最新のテクノロジーだけに要望には応えられるが、実装するには時間もお金もかかる。実際にPJTは長期化し、2年の目標が3年、4年と経っていった。費用も○億の予定が○○億と、数倍に増えていた。

※余談だが、このPJT自体が親会社の受注だったので、親会社や経営陣は予算オーバーでも何も言わず、子である我々に利益を吐き出させていた。あなた方は鬼か(笑)

④最新システムなのに、中身はアナログのシステムが完成

4年かけ、ようやくシステムが稼働。親会社と経営陣で派手に「稼働の儀」なんかやってたが、こちらとしては披露困憊。その上、完成したシステムは当初の目論見と大きくかけ離れていたものだった。

【実際に出来たシステム】

  • 業務改善はされず、古いやり方はあまり変わってない
  • システムが複雑すぎて一元管理できてない
  • エラーが多く、リアルタイムで見えない
  • 製品分析が出来るような設計を誰もしていない

最新システムなので便利になったこともあったが、最初に思い浮かべていたものとは全く違った。なにより、このシステムが出来たことで、売上が上がったわけでも、利益が増えたわけでも、業務がラクになったわけでもない。あれは何のためにやっていたのか?と今でも思う。

※余談だが、私は経理回りの責任者だった。私の場合は経営者とも仲が良かったので、自分で戦略をつくって報告し、了承を得て改善することができていた。でもそんなに権限持たせてもらえる部門などほとんどなく、どのメンバーも「こんな苦労して、本当に会社がよくなるの?」と言いながら作業をしていたことをよく覚えている。

アナログの罠が発生するメカニズム

ノンフィクションのエピソードから見るに、アナログの罠が発生する理由は2つある。

①システム導入前の古いプロセスを新システムに踏襲するから

新しいシステムはデジタルの良さを活かす前提で作られている。しかしアナログで古いプロセスを無理やり踏襲しようとすると、新しいシステムの潜在能力を引き出せず、生産性向上には繋がらない。

今回のエピソードでは、PJTメンバーが「やり方を変えたくない」と考えたのが間違いだったし、経営者が「現場に任せる」というのも間違いだった。新システムに合わせて、自分たちの古いプロセスを変更すべきだったのだろう。

②デジタル化で実施すべきことを明確にしていないから

デジタル化やDXで、何を実現してどんな効果があるのか。目的と効果を明確にして改善しなければ意味がないし、投資対効果(ROI)は下がる。投資の正当性を証明できなければ、プロジェクトとしては失敗と言えるだろう。

今回のエピソードの場合、現場はシステムを入れることが目的になっていた。だがデジタル化やシステム導入は手段であって、目的ではないのだ。自社が何を達成したくて、どんな効果があるのか、全社で考えて意思統一を図っていく必要がある。

こういうことを書くと「うちはそんなことない」という経営者もいそうだが、問題は現場がどう思っているか、である。現場がシステムを入れることが目標になっていれば、経営者の想いや実現したいことなどを無視して、現場のやりたいようにシステムを組むはずだ。そこはきちんと理解してもらう必要があるし、現場任せにしないことが大事になる。

まとめ

アナログの罠が発生する理由は2つある。

  • システム導入前の古いプロセスを新システムに踏襲するから
  • デジタル化で実施すべきことを明確にしていないから

次回はアナログの罠に陥らないために、具体的な対策や解決策を書いてみる。【営業サポート】本当にDXできてますか?アナログの罠を脱却し、デジタル変革で成果を上げる戦略③ に続く。

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